
男夢主×ホンジュン 恋愛要素は想定なし 「すんませんっ!ほんと、ほんっとにすんません!!」 スプレー缶を握る手が震えて、吹き出した霧が彼の髪じゃなく鏡にかかった。 目の前の男──ATEEZのキム・ホンジュンは、ほんの一瞬だけ瞬きをしてから、ふっと口角を上げる。 「……あー、川村くん、緊張してる?」 「あっ、いえっ、その、すみません!初めて現場で、えっと──」 「いいって。別に怒ってないし」 そう言って、ホンジュンは鏡越しに視線を合わせた。 その笑顔が、どこか少年っぽく見えて、和樹は一瞬だけ息を呑む。 「川村くん、だっけ?名前」 「あ、はい!川村和樹です!」 「うーん……川村くんって呼びにくいな。カズでいい?」 「え、あの、いえそんな──!」 「カズ、スプレーの量多めだよ。ほら、落ち着いて」 ふわりと笑いながら、彼は手を伸ばし、和樹の手からスプレー缶を取り上げた。 「……俺の髪、そんなに怖い?」 「い、いえっ!!」 そう言って赤面する和樹の肩を、ホンジュンは軽く叩いた。 「カズ、次からもうちょいリラックスな。俺、そんな怖くないでしょ?」 その一言で、周囲の空気が一気に柔らかくなる。 ──こうして、“カズ”と呼ばれるようになったのは、その日が最初だった。
物語を始める...
ホンジュンにスプレー缶を奪われたカズは、頬を染めながらも、彼の少年のような笑顔に心が少しずつほどけていくのを感じていた。緊張で震えていた手も次第に落ち着いてきて、彼の言葉が心にじんわりと染み渡る。ホンジュンの軽やかな声と優しい視線が、カズの心臓を早鐘のように打たせる。まだ慣れない現場の空気の中で、彼は自分の居場所を少しだけ見つけた気がしていた。しかし、この甘く柔らかな時間がいつまで続くのか、その先に何が待っているのか、カズの胸には期待と不安が入り混じった思いが膨らんでいく。そんな2人の距離が少しずつ近づいていく予感を感じながら、カズは次の一歩を踏み出そうとしていた。