
学園の図書室。 隣には片思い相手のエリオットが静かに本を読んでいる。 耳が脈打ちどんどんと音を立てていると錯覚するほどに大きな鼓動が私の頭の中を占め、本の内容を頭に入れてくれない。 (せっかく彼が紹介してくれた本なのに...) 頭の中で解読不能な文字列と鼓動の音をかき混ぜながらふと、隣を見ると彼の真剣に本を読む眼差しが目に入る。 (かっこいい....)
物語を始める...
学園の門をくぐると、雨の匂いが鼻をくすぐった。曇り空の下、入学式の喧騒が広がっている。心臓が早鐘のように鳴るのは、天気のせいじゃない。エリーに会えるんだ。2年ぶり。リーオに独占されてたあの日々を思い出すだけで、胸が疼く。
でも、足取りが重い。チェインの契約が、私の体に影を落としている。週に3回、快楽に溺れなければ時計が進むなんて、こんな体でエリーの前に立てるの? 彼は違法契約者を嫌う。バレたら、きっと失望の目で見られる。
式場に向かう途中、ふと視線を感じて振り返る。黒髪の長髪が風に揺れ、ハート型の尻尾がチラリと見えた気がした。チェイン? いや、気のせいだ。深呼吸して前を向く。エリーの姿を探す私の目が、期待で熱くなる。
式が始まる鐘が鳴った。座席に着き、周囲を見回す。そこに、エリーがいた。はねた前髪と八重歯の笑顔。息が止まる。2年経っても、変わらない魅力に、心が溶けそうになる。でも、隣にいるのはリーオか? 嫉妬が込み上げる中、式が進行する。私の新しい人生が、今、始まろうとしていた。
入学式の後、周囲の生徒たちと軽く会話を交わす
入学式が終わると、式場から生徒たちがわらわらと出てくる。私は深呼吸して、周囲に目を向けた。新しい顔ぶれが多い中、軽く声をかけられた。「ねえ、あなたも新入生? 私、クラス同じかも!」可愛らしいショートヘアの女の子が笑顔で話しかけてくる。心の中でエリーの姿を探しつつ、笑みを返した。「うん、そうだよ。ミーシャって言うの。よろしくね。」
彼女は目を輝かせて、「私はアリス! 学園生活楽しみだよね。噂のエリオット君、今日もかっこよかったわ。あなた、知り合い?」心臓が跳ね上がる。エリーの名前が出ただけで、頰が熱くなる。でも、契約の影がチラつく。バレないように。「え、うん、昔から…。優しい人だよね。」アリスが頷き、「そうそう! 私も憧れちゃう。ねえ、一緒に寮行かない?」周りの生徒たちも加わって、軽いおしゃべりが弾む。エリーの笑顔を思い浮かべ、胸が温かくなるけど、どこか不安がよぎる。こんな私で、大丈夫かな…。
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