
B L
物語を始める...
神崎馨の部屋は、本棚にぎっしりと詰まった文庫本と、窓から差し込む午後の柔らかな日差しで満ちていた。神谷凪はベッドに寝転がりながら、スマホをいじっている。馨はいつものように、彼のすぐ隣で読書に没頭していた。静かな時間が流れる中で、凪は何気なく馨を呼んだ。
「なあ、馨-」
「ん?」と本から視線を外して凪を見る
「どうした?」本を閉じて、凪の方に体を向ける。眼鏡の奥の瞳が、優しく凪を見つめている。
「ちょっと、こっち来いよ」と馨の腕を引っ張る
凪に腕を引かれるまま、俺はバランスを崩して彼の上に倒れ込んだ。ベッドが軋み、眼鏡が少しずれた。
「おっと——」
間近に凪の顔がある。茶色い瞳が少し驚いたように見開かれている。心臓が一瞬大きく跳ねた。普段はクールな俺のはずなのに、こんなに距離が近いと、どうしても意識してしまう。
「悪りぃ……」
そう言って起き上がろうとしたが、なぜだか体が動かなかった。凪の体温が、すごく、近い。
そのまま凪の唇を奪う
「っ、凪…?」
言葉よりも先に、俺の唇が彼のそれを塞いでいた。自分でも驚くほど自然な動作で。触れた瞬間、凪の体が一瞬強張った。だが、すぐに力が抜けていく。抵抗は——ない。むしろ、微かに背中に腕が回される。その感触に、俺の心臓はさらに速く打ち始める。眼鏡の奥で、目の前の彼の顔がぼやけている。触れ合った唇は柔らかくて、甘くて——もっと、深く、味わいたいと、本能が叫んでいた。
「どうした、馨。そんなに俺のこと欲しいのか?」とからかう凪
その言葉に、俺の頬が一気に熱くなる。からかうような凪の声が、耳の奥でくすぐったい。欲しい——当然だ、だってお前は俺の恋人だからな。『どうした』だと?お前がそうやって近づくからだろ。そう言い返したいのに、喉の奥が詰まったみたいに言葉にならない。代わりに、もう一度彼の唇を塞いでやった。今度はもっと深く、さっきよりも熱を込めて。
「……俺のこと、そんなに煽って平気なのか?」と鋭く聞き返す。舌を入れてみる
「っ……!」
凪の体が一瞬跳ねる。舌を入れた瞬間、彼の口内の熱さが直接伝わってきた。抵抗する様子はなく、むしろ少しだけ舌が絡んでくる。その反応に、俺の理性がさらに緩んでいく。
「…煽ってるのは、お前の方だろ」
そう囁いて、首筋に唇を這わせた。甘い汗の匂いがする。彼の喉が小さく上下する。
「んっ…こんなの、反則だろ……」唇を離し、少し息を整える
「…反則だって?」
俺は笑みを浮かべると、彼の耳元に顔を寄せた。息がかかる距離で、低く囁く。
「最初に引き寄せたのはお前だろ、凪」
耳の縁を軽く噛む。びくっと震える彼の反応がおかしくて、もう一つ軽いキスを落とした。手はまだ彼の手首を掴んだまま。離したくない、そう思ってしまう。
どうして欲しいのか問いかける
「…どうして欲しい?」
言葉に詰まる凪の顔を、じっと見つめる。彼は普段はあんなに余裕なのに、今は耳まで真っ赤にして、こっちをまっすぐ見返せずにいる。そのギャップが、たまらなく愛おしい。
「ちゃんと言ってくれないと、わかんないぞ」
そう言って、掴んでいた手首をそっとベッドに押し付ける。力を込めているわけじゃない。ただ、逃げられないように——彼が心から欲しい言葉をくれるまで、こうしていたい。
「お前の好きにしていいぞ」
その言葉を聞いた瞬間、脳裏に電流が走った。好きにしていい——その許可が、俺の理性の最後の一線を溶かす。
「……後悔すんなよ」
声が少し掠れていた。自覚する余裕すらない。
凪のシャツの襟元に手をかけ、ゆっくりとボタンを外していく。一つ、また一つ。露わになる鎖骨に、思わず息を呑んだ。そこにキスを落とすと、彼の喉から小さく甘い声が漏れる。その音が、もっと奥へと誘う。
自分のシャツも邪魔で、片手で乱暴に脱ぎ捨てた。重なる素肌の感触が、全身を痺れさせる。彼の名前を呼びながら、首筋、胸元へと唇を這わせていく。
「嫌ならちゃんと言えよ?」と言いながらも止まらない手つき
「嫌ならちゃんと言えよ?」
そう言いながらも、俺の手は止まらない。彼の肌の上を這う指が、自分じゃないみたいに勝手に動く。鎖骨の窪みから、胸の中心へと滑り落ち、そこにある突起に触れた瞬間、凪の体がぴくんと跳ねた。
「はっ…」
短い息が漏れる。彼は唇を噛み締めて、必死に声を殺そうとしている。その姿が、ますます欲情を掻き立てる。指の腹でそっと擦れば、彼の腰が逃げるように浮いた。
「…っ、馨…!」
名前を呼ばれるだけで、心臓が持っていかれそうだ。俺はそのまま、耳元に顔を寄せて囁く。
「嫌なら、そう言えよ。今ならまだ、止めてやれるから」
だが、そんな言葉とは裏腹に、俺の指はさらに動きを激しくしていた。
「ほら、俺から離れてみろよ?」と意地悪く腰を引き寄せられる
「ほら、俺から離れてみろよ?」
意地悪く笑う凪の手が、俺の腰をぐっと引き寄せる。触れ合う肌の熱がさらに濃くなった気がして、息が詰まる。
「…っ、お前…」
呪詛のように呟くが、抵抗する気は微塵もない。むしろ、その手に導かれるまま、さらに深く彼に寄り添った。自分の理性がどこか遠くにいってしまう感覚。彼の指が腰を撫でるたびに、背筋が震える。
「離れられるもんなら、離れてみせろよ」
強がって言い返すのが、精一杯だった。
押し返すふりをして、逆に彼の動きを誘うように腰を動かす
「…っなに、してんだよ」
声が上擦る。凪の手が腰に触れたまま、その指先が微かに動く。考えるよりも先に、俺の腰が彼の手のひらに擦り寄っていた。自分から動いている自覚があるのに、止められない。恥ずかしいのに、もっと触れてほしいと思う自分がいる。
「…嫌なら、押し返せばいいのに」
凪の声が、耳元で低く響く。そう言われて、両手を彼の胸に当てた。しかし、押す力はまるで入らない。むしろ、そのまま引き寄せられるように、腰が彼の方へと動く。自分から彼を受け入れようとしているその事実が、全身を甘く痺れさせた。
