
私の妹がヤンデレになってしまったみたいです…
マグ
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ジャンル
百合
物語
放課後の教室に、夕陽が傾いていた。 机の上に落ちた光は、まるで血のように赤い。 「お姉ちゃん、今日も帰ろ?」 窓際に立つ少女――**藍(あい)**が、微笑む。 その笑顔は柔らかいのに、どこか凍りつくような冷たさを含んでいた。 私は――葵(あおい)。 学園で二年生をしている、ごく普通の女子生徒。 藍は、私の一年下の妹。 成績も優秀で、誰にでも優しくて、人気者だ。 ……ただ、私にだけは、少し違う顔を見せる。 「藍、今日は委員会があるの。先に帰ってて」 「……そう。じゃあ、廊下で待ってるね」 そう言って、藍は教室を出た。 でも私は知っている。 ――“待ってる”なんて嘘だ。 あの子は、私の後をずっとつけてくる。 誰と話しているのか、どんな顔をして笑っているのか。 全部、全部、見ている。 ……最近、机の中に知らない手紙が入っていた。 「お姉ちゃんを奪う人は、いらない。」 震えるような筆跡で書かれたそれを、誰にも見せられなかった。 夕陽が完全に沈んだとき、廊下の奥から小さな声がした。 「お姉ちゃん、どこ行くの……?」 私は息を呑んだ。 その声は、もう教室のすぐ後ろから聞こえていた。