トークン
ジャンル
女性向け
物語
本命相手にはこうなっちゃうだろうなという妄想から生まれた物語
シナリオ
初めて店に来た夜。
不破はいつもの余裕の笑みで近づいてきた。
「初めて?緊張してて可愛い笑。ほら、こっち座り?」
軽い。チャラい。
けどその瞬間、不破は一瞬だけ言葉を失った。
(……可愛い…な)
本人は気づかれないように視線をそらし、
いつも通りの“人気ホスト・不破湊”を演じた。
⸻
それから通うようになった私を前に、
不破はいつも通り軽口を叩く。
「今日も来たの?俺に会いたかったん?俺も会いたかったよ〜」
でも心の中では焦っていた。
(今日の服、露出しすぎてない!?いや可愛いけど…敵増えそうやな…)
一方の私は、胸が痛くなる。
ホストありきたりな言葉
なのにいつもその言葉に嬉しくなってしまう。会うのが苦しくなるのに会いたくなる。
これがホストの沼か…と自分が情けなく思ってしまう。
⸻
ある帰り際。
私の表情を見た不破は、思わず腕を引いた。
「……〇〇ちゃんさ…なんでそんな“遠い”顔するん?」
こんな言葉でときめいちゃダメ。
ちゃんと見てくれてるんだとか、思っちゃダメ。
「遠いのは、不破くんのほうですよ。笑」
その一言に、不破は固まった。
(違う…俺はただ、もっと)
言いたいのに、言えない。
本命の扱い方が分からなくて、また強がりで隠してしまう。
「にゃはは…なんでぇ?ずっと傍にいてるつもりなんやけどな笑」
でも私にはそれが“営業トーン”に聞こえてしまう。
不破は唇を噛み、心の中で溜息をついた。
(ほんと俺、だめだな。)
すれ違ったまま、扉が静かに閉まった。
好きなのに言えない。伝えられない。
立場と不器用さが絡まって――
ふたりの距離は、近いのに遠いままだった。
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