
天使のくれた奇跡
anonymous
ジャンル
乙女(女性向け)
物語
古びた商店街に聞こえるピアノの音 それを機に出会った男女の歪んだ愛情
シナリオ
一ノ瀬かこ 高校3年生
京本大我(主人公) 高校3年生
【書き出し】(大我視点)
放課後。部活も、遊ぶ友達も、教室に残って勉強する理由も、何も無い大我は、チャイムが鳴るのと同時に教室を飛び出す。 皆はまだ友達と話したり各々青春の時間に花を咲かせているからか、正門まで歩く道のりには誰もいない。
仕事で色んな場所を飛び回る両親は家にいないし、1人だからといって特別やりたいことがある訳でもない。 そんな大我はまだ家には帰りたくなくて、いつも寄り道する商店街へ足を進めた。
街の人からはシャッター商店街と呼ばれている。 開いてる店は少なく、人もいない。
ただ、今日は音があった。 この古びた商店街には似合わないピアノの音。
吸い込まれるようにその音のする方へいけば、見たことの無い小さな広場があった。 コンクリートの床に手入れのされてない植木鉢があるだけ。
その広場の隅。不法投棄なのか、蔦が巻きついたピアノに座り演奏する少女「かこ」がいた。
かこは大我と同じ高校に通う同級生。 だが、学校では孤立してしまった為不登校。 そして、大我と同じく両親は仕事で忙しく家にはいつも1人。ここ最近はまともに顔も見ていない。
そんな人生に嫌気がさして今夜自殺しようと思っていた。 大好きな月と星に駆け込んで死のう。と。 それまでの時間、最後だからと学校にも顔を出し、終礼前に早退し、フラフラと歩いて見つけたここの商店街に来た。 そこで見つけたこのピアノで大好きな曲を弾いていた。
大我はそんなことは知らず、 かこが奏でるメロディーに聞き入っていた。
演奏が終わると、大我に気づき振り向いたかこの美しさに大我は一目惚れする。
なんの曲?から始まった質問。着ていた制服から同じ高校であり同じ学年であることも分かり大我の心は踊る。 何気なく聞いた、明日もここにいる?という質問。
かこは一瞬迷ったが正直に言った。 いません。今日の夜でこの世界ともお別れです。 と。
大我は驚きで言葉が出なかった。 会って間もないのに、全てに惹かれてしまったかこが今日で死ぬなんて。
そんな大我を見てかこは可笑しそうにくすっと笑う。 必死になって説得する大我を他所にかこは淡々と語る。 学校で孤立して不登校なこと、家でまともな愛情を与えられなかったこと、今日の夜、月と星が綺麗に見える丘で自殺すること。 全てを語った。
かこの話を全て聞いた大我は、すぐに決めた。 自分も死のう。と。 かこの話と自分の境遇は似たものを感じた。 学校で孤立してるのも、家族の愛情が分からないのも、全てどこか似たものを感じた。
俺も死ぬ。 突拍子のないことを言い出す大我にかこは酷く困惑した。 家族は?これからの未来は?私は一人で大丈夫だから。 さっきの大我と同じように必死に説得した。 それでも大我は 「もうかこのいない未来とか想像できない」 と言う。 出会って間もない、同じ学校で同い年ということがわかっただけなのに、大我の中で大きな存在となれてその一言に込められた大きく歪んだ愛情を汲み取ったかこは大我を受け入れる。
そこから2人は並んで丘まで歩いた。 これから自殺するなんて思えないほどに、世間話や家の愚痴、大我からの学校エピソードなどで盛り上がった。
ちょうど丘のてっぺんにつく頃には日はとうに落ちて、空は満月と無数の星で満ちていた。
かこは携帯を取り出して音楽をかける。 さっき弾いた。大我と出会うきっかけになった曲。 「天使のくれた奇跡」を。
2人は静かな丘に響くその曲と無数に光る星の中手を取った。
「来世はお互い幸せになろう。」 「幸せになれなかったとしても、また出会って2人で幸せを作ろう。」
「絶対に来世で会おう。」
そう約束を交わし、誓いを刻むかのように口付けした。
丘から落ちる間も抱き寄せた身体は離すことなく、夜に沈んでいった。
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