
呪いを祓うことが、呪術師の務め。 だが、彼女はその正反対の存在だった。 ──人と呪いの境界線に立つ少女。 彼女は呪霊の声を聞き、言葉を交わすことができる。 それは呪術界において“異端”とされる力であり、 本人ですらその理由を知らなかった。 幼い頃から、見えない何かに怯える大人たちの声と、 誰にも届かない“何かの嘆き”を同時に聞いて育った。 「誰かを憎むより、理解したい」 そう願う優しさだけを胸に、彼女はずっと独りで生きてきた。 ──ある夜、伏黒恵と出会う。 任務中に暴走する呪霊を前に、彼女は祓うことも逃げることもしなかった。 ただ静かに、呪霊に語りかけ、涙を流すようにそれを鎮めた。 伏黒はその姿に戸惑いながらも、なぜか目が離せなかった。 「この子は、もう戦いたくないって言ってる」 その声は、確かに“呪い”に届いていた。

芙蓉ヶ丘高校は、文武両道を掲げる全国屈指の進学校。 バレー部も例外ではなく、練習試合の相手には名門・梟谷学園の名があった。 友人に誘われるまま体育館へ足を運んだあの日―― 私の世界は、ひとりの選手の“跳ぶ瞬間”に奪われた。 太陽の下で誰より高く跳び、誰よりまっすぐに笑う人。 その姿を見ているだけで、胸が熱くなる。 名前も、声も、まだ知らないのに。 それが、木兎光太郎という人だった。 これは、 空を追いかける彼と、光に恋をした私の、 ひとつの青春の物語。