
帰り道のない肝試し
誰が言い出したのかはわからないが、6人と1匹は麓の街へきていた。 「ここだよなー。噂の廃病院って」 エースがなんともないような声で言う。 街外れに建つそれは、 夜の闇に溶けかけた灰色の建物だった。 割れた窓からは黒いカーテンのような影が垂れ下がり、風が吹くたび、かすかに揺れる。 「……ほんとに入るのか?」 デュースが喉を鳴らす。 「当たり前だろ。ここまで来て引き返すとかナシな」 エースはそう言いながらも、足は一歩も前に出ていない。 「ふん、こんなの余裕だべ」 エペルは腕を組み、強がるように鼻を鳴らした。 だが、視線は建物の正面ではなく、足元に落ちている。 「医学施設は、閉鎖後も器具や薬品が残されている場合がある」 ジャックは淡々と周囲を見回す。 「不用意に触れるな。床が抜ける可能性も高い」 「なあ、早く入ろうぜ。寒いし」 グリムが不満げに尻尾を揺らした。 そのときだった。 セベクが、すっと片手を上げる。 「……待て」 全員の視線が集まる。 「どうした?」 エースが首をかしげた。 「……誰か、来たか?」 「は?」 「こんなとこに人なんか——」 言いかけたデュースの声が、途中で途切れた。 廃病院の奥、 割れた玄関ガラスの向こうで、 白い何かが、ゆっくりと横切った。 「……今の、見たべ?」 エペルの声が震える。 「風だろ。カーテンとか」 エースはそう言ったが、 その目は、明らかに泳いでいた。 私は無言で、建物を見つめていた。 胸の奥が、ひどくざわつく。 ――ここは、入ってはいけない。 そんな直感が、 頭の中で何度も警鐘を鳴らしている。 なのに。 足が、動かなかった。 「……監督生」 低い声で、セベクが私の名前を呼ぶ。 「何か、感じてるか?」 答える前に、 病院の中から、金属が転がるような音が響いた。 カラン、カラン、と。 まるで、 誰かが中で、歩いているみたいに。 沈黙が落ちる。 「……入るの、やめねえ?」 デュースが小さく言った。 エースは一瞬だけ、病院を見上げ、 それから、にやりと笑った。 「ここまで来て? それはそれで、後悔しそうじゃん?」 その言葉が、 決定打だった。 誰も、引き返さなかった。 そして、 この選択を後悔することになる。

ちょっとしたすれ違い
ある日の放課後、授業を終え、いつものように植物園で寝ているであろう恋人を迎えに行く。 だがそこには恋人の姿はなく、ただ眠気を呼び寄せるような暖かさと綺麗な植物だけがあった。もうその日は恋人の寮へは行かず自分の寮へ戻った。 それから数日経つが未だ恋人には会えていない。連絡も音信不通。もしかしてもう自分には興味が無くなったのだろうか。冷められてしまったのではないか。ぐちゃぐちゃとした感情が胸の中をかき乱す。 元から恋人ではあるがそれほどベタベタはしてこなかった。少し勇気を出して自分から手を触れさしてみたり、触れるようなやさしいキスをしたり。 思い返してみればエレメンタリースクールでも珍しいような清々しい付き合いだったと思う。連絡もつかない為、恋人の同じ寮の子にでも聞いてみよう。 ────確か、いつも恋人の身の回りの世話をしていた後輩と連絡が繋がっていたな。話したことは無いけど。。名前はー、そう、ラギー・ブッチ。 俺は彼をあまりよく思っていない。言葉を交わしたことは少ししかないが、彼は何かと自分の恋人と一緒にいた。お互い心を開いているような、そんな距離感が羨ましかったのだ。 彼に連絡をして聞いてみよう。認めたくはないし不本意だが彼なら何か知っているであろう。 最悪の自体が起こってしまえば、俺は潔く別れる他ないな、と心を落ち込ませながら連絡をした。

トークン用
トークン用‼️

