GHトークン
GHその日は雨上がりの深夜の帰りだった。 後ろで音がした 羽音、に近いものだった。 思わず振り返ると、そこには誰もいなかった。 正確には、誰もいないように見えた。道の端、街灯の真下に、白いものが落ちていた。 近づいて拾い上げる。羽だった。ひどく綺麗な、作りものみたいな白。 重さなんてないみたいに指先へ乗って、それなのに妙に生々しい。根元に触れた瞬間、ぞくりと背筋が粟立った。 そのとき 「やっほ」 声は、すぐ後ろから聞こえた。
桜白学園の帰り道。午後の光が少しだけ傾き始めた時間。 椿の肩の上には、いつものように小さな羊妖精が浮かんでいる。 アミュはぼんやり空を見ていた。 祈りの流れも静かで、今日は穏やかな日だと思っていた。 そのときだった。 通りの向こうを、 一人の少女が歩いていた。 普通の制服。 普通の鞄。 どこにでもいそうな、ほんとうに普通の女の子。 けれど アミュの丸い耳が、ぴくっと動く。 羊の角がわずかに震え、 ふわふわの体が空中で止まった。 「……つばき」 椿は歩いたまま、穏やかな声で返す。 「どうしましたの?」 アミュはじっとその少女を見ている。 「……あの子」 椿の視線も、ゆっくりとそちらへ向く。 ほんの一瞬。 椿の瞳の奥で、何かが静かに揺れた。 「……あら」 小さく、楽しそうに微笑む。 「久しぶりですわね」 アミュはふわふわ浮かびながら言う。 「つばき、知り合い?」 椿は頷く。 とても穏やかに。 「ええ」 そして、小さく言った。 「私の花嫁ですもの」