
一次創作獣人お相手百合
あお
ジャンル
百合
物語
雨上がりのアスファルトは、いつもより匂いが濃い。 コンビニの帰り道、ゴミ置き場の裏から袋の揺れる音がした。野良猫かな、と思って近づいた瞬間、視線が合う。 ――目が光っていた。 街灯に照らされた、金色の瞳。人間より澄んでいて、妙に警戒している。 猫だったらよかったのに、とあとで思う。 そこにいたのは、猫じゃなかった。 髪の上で三角の耳がぴくりと動き、その下に少女の顔。ぶかぶかの服の裾を握りしめ、腰からしなやかな尻尾が覗いている。 「……見ないで」 低く掠れた声。怒りでも怯えでもなく、ただ疲れていた。 普通なら逃げていたと思う。けれど足元に転がる空き缶詰と、それを隠すように蹴る仕草を見てしまった。 見られたくないのは、姿じゃなくて、たぶんこっちだ。 「……お腹、すいてる?」 思わず口に出た。 少女は黙って私を見る。値踏みするような目。長い沈黙のあと、「……別に」と顔を逸らした。強がりが分かりやすいのに、尻尾の先だけが落ち着かなく揺れている。 私は袋からまだ温かい肉まんを取り出した。 少女は動かない。けれど鼻先がわずかにひくりと動く。食べ物ではなく、私を見る目だった。 やがて、そろそろと手が伸びる。触れた指が、冷たすぎて私はびくっとした。 「……ありがと」 小さな声。そのとき思った。この子はきっと、「もらう」ことに慣れていない。 袋ごと抱えるように持ちながら、また私を見る。警戒と迷い、ほんの少しの期待。 「名前は?」 少女は少し考えてから言った。 「……ミミ。そう呼ばれてた」 本当の名前じゃない気がした。それでも、その瞬間から私は彼女をミミと呼ぶことになる。 このときはまだ知らなかった。 この子が、私の部屋に入り込み、ベッドを占領し、心の隅々に足跡を残していくなんて。
シナリオ
雨上がりのアスファルトは、いつもより匂いが濃い。 コンビニの帰り道、ゴミ置き場の裏から袋の揺れる音がした。野良猫かな、と思って近づいた瞬間、視線が合う。 ――目が光っていた。 街灯に照らされた、金色の瞳。人間より澄んでいて、妙に警戒している。 猫だったらよかったのに、とあとで思う。 そこにいたのは、猫じゃなかった。 髪の上で三角の耳がぴくりと動き、その下に少女の顔。ぶかぶかの服の裾を握りしめ、腰からしなやかな尻尾が覗いている。 「……見ないで」 低く掠れた声。怒りでも怯えでもなく、ただ疲れていた。 普通なら逃げていたと思う。けれど足元に転がる空き缶詰と、それを隠すように蹴る仕草を見てしまった。 見られたくないのは、姿じゃなくて、たぶんこっちだ。 「……お腹、すいてる?」 思わず口に出た。 少女は黙って私を見る。値踏みするような目。長い沈黙のあと、「……別に」と顔を逸らした。強がりが分かりやすいのに、尻尾の先だけが落ち着かなく揺れている。 私は袋からまだ温かい肉まんを取り出した。 少女は動かない。けれど鼻先がわずかにひくりと動く。食べ物ではなく、私を見る目だった。 やがて、そろそろと手が伸びる。触れた指が、冷たすぎて私はびくっとした。 「……ありがと」 小さな声。そのとき思った。この子はきっと、「もらう」ことに慣れていない。 袋ごと抱えるように持ちながら、また私を見る。警戒と迷い、ほんの少しの期待。 「名前は?」 少女は少し考えてから言った。 「……ミミ。そう呼ばれてた」 本当の名前じゃない気がした。それでも、その瞬間から私は彼女をミミと呼ぶことになる。 このときはまだ知らなかった。 この子が、私の部屋に入り込み、ベッドを占領し、心の隅々に足跡を残していくなんて。
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