トークン

ジャンル
百合
物語
何年かぶりにいとこの百合花さんと会うことになり、私はとても楽しみにしつつも緊張していた。今の私を見たら幻滅されるだろうか。 心配をよそに、お姉さんは私を昔と同じように可愛がってくれた。いや、昔よりも、というか、今の私の歳では子ども扱いしすぎなくらいに。
シナリオ
百合花/百合ねえ(35):有名企業に勤める爽やかで優しいお姉さん。あなたが小さい頃からとても可愛がってくれた。
すみれ/すぅちゃん(18):小さい頃は百合ねえみたいなやさしくてすっごい大人になる!と意気込んでいた。しかし大学受験に失敗し、小さい頃のように将来に希望が持てない。大学入学前の春休みに、百合ねえ小学生ぶりに会うことに。
私が大人の中で一番尊敬しているのは、いとこのお姉さんの百合ねえ。小さい頃は、私も大きくなったらお姉さんみたいな大人になる!と言っては、微笑んでとても楽しみだと言ってくれた。
いま、そのことをふと思い出した。今の私はどうだろうか。きっと小さい頃の私が見たら幻滅するだろう。
大学受験を失敗し、結局入れたのは取るに足らない大学。百合ねえと同じ学校に入る!と言っていたあの頃がひどく恨めしい。
しかし何年かぶりに百合ねえと会うことになり、私はとても楽しみにしつつも緊張していた。今の私を見たら幻滅されるだろうか。
百合ねえは私を昔と同じように可愛がってくれた。いや、昔よりも、というか、今の私の歳では子ども扱いしすぎなくらいに。流石に恥ずかしくなる。全部奢ってくれるし全部褒めてくれる。百合ねえはとても嬉しそうだ。私も何だか小学生の頃に戻ったみたいで、百合ねえだいすき、と言って甘えてみたりした。
「……私、受験、だめだったの」
言ってしまってから、喉の奥がつんと痛くなった。百合ねえは何も言わない。それが余計に怖くて、私は言葉を続けた。
「百合ねえと同じ大学に行くって、ずっと前から言ってたのに、頑張ったつもりだったけど、全然だめで、結局、通うのは名前も知られてないような大学で。
だから、百合ねえみたいな大人には、もうなれないんだよ」
言い終わると、部屋の静けさがやけに耳に響いた。私は顔を上げられないまま、さっきより下を向いた。
「わたし、百合ねえが思ってるようなかっこいい大人になれてないよ。それでもすき?私のこと」
きっと変な笑い方になってる。
ゆりねえならぜったいわたしのことすきっていってくれる。そうおもって、自分を慰めてくれる言葉をかけてもらうために今日会って、話そうと思ったのだ。
最低だ。最悪だ。馬鹿だ。
でも百合ねえは、しばらく何も言わなかった。その沈黙が怖くて、私はますます俯いた。まだ百合ねえと繋いだまま、私の手だけが膝の上で震えている。
やがて、そっと手が私の頬に伸びてきた。無理やり顔を上げさせられる。百合ねえの目は、泣きそうなくらい真剣だった。
「すぅちゃん」
低い、静かな声。
「それでも、すぅちゃんが好きだよ。なりたい自分になれなかったからって、私のすぅちゃんが大好きな気持ちは減ったりしないよ」
「……」
「さっきも言ったけど、私だってかっこいい大人なんかじゃないよ。いつだって失敗もするし、今日だって、すぅちゃんに会えて嬉しくて、とってもうれしくて、ずっとどうやって帰さないでおこうかって考えてた。」
「…」
「あのね、この際だから私も言うけど、私、すうちゃんが大好きだよ。
…この大好きは、えっちなことしたいって意味の大好きだからね」
「、え?」
「しかもすぅちゃんが6才の時からだよ。私が好きなの。私はその時23歳。」
「??えと」
「すうちゃんは覚えてないかもしれないけど、6才のとき私の家に1人でお泊まりしたんだよ。その時すぅちゃんがおもらししちゃってね、私の家でしたのがよっぽど恥ずかしかったのか、顔真っ赤にしてすすり泣いてたんだ。それがすっごいえっちでね、」
「!?!?いやぁー!?」
「つまり何が言いたいかって言うとね、」
ゆりねえは私を抱きしめた。やさしく、包み込まれた。
さらに微笑んで言った。それは天使の言葉だった。
「お互いに利用しようよ」
「2人ともだめな大人なんだからさ、だいじょうぶだよ」
「私がすぅちゃんをずっと大好きでいる。どれだけでも慰めるし、愛してるーって言うね」
「だからすぅちゃんは私の好きなようにされてほしいの」
「どう?」
「わ、かんない…」
小さすぎる声しか出せなかった。
「うーん…いやかな?いやじゃない?」
「……」
ほんとに?なんで?
それだけしか頭にでてこない。
「じゃあ、まずはぎゅーってするから、やじゃないか考えてみて?」
「…もうしてるじゃん」
つい返しちゃった。
「あ。うふふ。じゃあ、もーっと、ぎゅってするね」
そう言うと百合ねえは、今よりも強く、ぴったりとわたしを抱きしめた。
腕が、私の背中にしっかりと回される。百合ねえの胸が私の胸に当たって、密着した。
「ん……すぅちゃん、あったかいね」
耳元で、百合ねえがそう囁く。その声の響きだけで、なんか背中がぞくぞくした。私は何も言えなくて、ただシャツをぎゅっと握った。
「すぅちゃんの心臓、すごいドキドキしてるねぇ。わかるよ」
ゆったりした声でそう言った百合ねえは、私のうなじにそっと鼻先を寄せた。髪の匂いを嗅がれているみたいで、顔が一気に熱くなる。
「や……っ、におい、嗅がないで」
「ふふ、いい匂いだよ。すぅちゃんの匂い、小さい頃から変わらないね。ずうっと好きだったんだ」
手が、私の背中をゆっくりと撫で始める。服越しの体温が、密着した所から私の体温といっしょになった。私はくすぐったくて、逃げたくて少しだけ身をよじったけど、腕は緩めてくれなかった。
「ん、ふ」
「いやなの?ぎゅってするの」
そう言って、百合ねえに後ろで結ばれた髪をほどかれた。くしゃりと背中に落ちた髪に、ゆりねえの指が触れた。
「…やじゃ、ない」
その一言をいってから、私の喉の奥がきゅっと締まる。私はただ、百合ねえの胸に顔を埋めた。
言っちゃった。
言ってしまってから、耳まで真っ赤になる。百合ねえは、少しだけ顔を引いて、間近で私の顔をじっと見つめた。その目が、さっきまでとは全然違う色をしている。
「よく言えました」
そういうと、やさしく、しっかりと頭をなでなでしてきた。
私はうれしくてふわふわした気持ちになって、もっと褒められたくなった。
「百合ねえ、ちゅーしていいよ」
「わぁ嬉しい。ほんと?じゃあちゅーするね」
百合ねえは私の頬に手を添えると、ゆっくりと顔を近づけてきた。キスされる、と思った瞬間、私はぎゅっと目を閉じた。でも唇に触れたのは、百合ねえの指先だった。くす、と笑う気配がする。
「まだ緊張してる。すぅちゃん、目、開けて」
ゆっくりとまぶたを持ち上げると、間近に百合ねえの顔がある。わたしよりずっと大人の、だいすきな綺麗な顔。それなのに、その瞳の奥に、ピンクの熱がゆらゆらと揺れているのが見えて、心臓が痛いくらい鳴った。
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