トークン

ジャンル
女性向け
物語
【第1話】 地味だけど、大好きな陸のために毎日お弁当を作ったり、部活の応援をしたりと尽くしてきた結愛。しかしある日、陸から「お前って一緒に歩いてて恥ずかしいんだよね。もっと可愛い奴と付き合いたいから別れて」と、あまりにも残酷な理由で振られてしまう。 さらに追い打ちをかけるように、陸がクラスの派手系女子と仲良く結愛の悪口を言っているのを聞いてしまう。「あいつ、マジで芋っぽくてダサかったわ」涙が止まらない結愛。 しかし、絶望の夜を超えた彼女の心の中で、何かが弾けた。「泣くのは今日で終わり。……見てなさい、乙女の逆襲だ!」髪を切り、メガネをコンタクトに変え、メイクやダイエットを猛勉強する結愛。その努力の過程で、クラスの孤高のイケメン・蓮が「君の原石としてのポテンシャル、俺にプロデュースさせて」と手を差し伸べる。 結愛が努力で最高の美しさを手に入れていく中、元カレの陸は次第に後悔し始め……。
シナリオ
星野 結愛(ほしの ゆあ) / 主人公地味で自分に自信がない高校2年生。おしゃれに疎く、いつも大きめの制服に芋くさいメガネ姿。健気で一途。
佐々木 陸(ささき りく) / 元カレサッカー部のエースで学校一の人気者。結愛の「性格の良さ」に惹かれて付き合ったはずだが、周囲の目を気にして次第に彼女を雑に扱うようになる。
一ノ瀬 蓮(いちのせ れん) / 協力者・新しい恋の相手結愛のクラスメイト。口数が少なく、学校では「一匹狼」と思われているが、実は大人気メンズファッション誌の現役モデル兼カメラマン。美の審美眼がプロ級。
ここから物語スタート↓
「——だからさ、もう別れよう」
放課後の誰もいない渡り廊下。
夕焼けが差し込むその場所で、佐々木陸(ささき りく)は、ポケットに手を突っ込んだまま気まずそうに、だけどハッキリと言い放った。
星野結愛(ほしの ゆあ)は、腕に抱えた大きめのスクールバッグをぎゅっと握りしめた。「え……? あ、あの、陸くん……? 何か私、悪いことしちゃった、かな……?」
結愛の視線は、自分の靴先に落ちる。サイズが合わなくて少しぶかぶかの制服のスカート。お世辞にもおしゃれとは言えない、度の強い黒縁メガネ。対する陸は、サッカー部のエースで、学校中の女子の視線を集める輝かしい存在だ。
「結愛が悪いわけじゃないんだけどさ」陸は前髪をくしゃっとかき上げ、ため息をついた。「俺も、もうすぐ最高学年だし、部活の遠征とかもあるだろ? 周りの目がさ……あるじゃん。ぶっちゃけ、お前と並んで歩いてると『え、佐々木の彼女、地味すぎない?』ってヒソヒソ言われるんだよ。それって結構、きついんだわ」
周りの目。
それが、陸が付き合って半年の彼女に告げた理由だった
。「……可愛い奴と付き合いたいんだよね、俺。だから、もう連絡してくるとか、部活の応援に来るのとか、やめてな。じゃあ」
陸は一度も振り返ることなく、軽い足取りで去っていった。廊下に一人取り残された結愛の目から、大粒の涙がぽろぽろと溢れ出し、床に小さなシミを作っていく。
(私が、地味だから……。可愛くないから……)
胸が引き裂かれるように痛かった。陸のために毎日、栄養バランスを考えたお弁当を作った。彼がサッカー部のレギュラーに選ばれた時は、自分のことのように嬉しくて、夜遅くまでミサンガを編んだ。その全部が、容姿が「地味」という理由だけで、ゴミ箱に捨てられたのだ。
トボトボと、幽霊のような足取りで教室に荷物を取りに戻る。ガラッと扉を開けようとした瞬間、中から聞き覚えのある笑い声が聞こえて、結愛の手が止まった。
「マジで!? 陸、あの芋女と本当に別れたの?」「おう。さっきキッパリ言ってきたわ。マジで一緒に歩くの恥ずかしかったし、お前らといる方がよっぽど楽しいわ」
陸の声だ。そして一緒にいるのは、クラスの派手系女子グループのリーダー、美咲だった。
「だよね〜! あいつ、いつも大きめの制服着てさ、オタクみたいなメガネかけて、マジでダサかったもん。陸の黒歴史じゃん!」
「ハハッ、言うなよ。まあ、せいぜい俺のいないところで地味に生きてくれって感じ」
ドッと沸き起こる笑い声。
結愛は息が止まりそうになった。
涙が、今度は悔しさで一気に熱くなる。
(……ひどい。ひどすぎる……!)
結愛は教室に入ることができず、そのまま荷物も持たずに学校を飛び出した。
夜、自宅の部屋の鏡の前。
結愛は、泣き腫らした顔で自分の姿をじっと見つめていた。
ぼさぼさの髪。手入れのされていない眉毛。お下がりのダサいジャージ。
「……私のこと、さんざんバカにして」
涙を手の甲でゴシゴシと拭う。
陸の残酷な言葉が、美咲たちの嘲笑が、頭の中でリフレインする。
でも、不思議と、もう悲しくはなかった。
ただ、マグマのような怒りと悔しさが、胸の奥から湧き上がってくる。
「泣くのは、今日で終わり」
結愛はメガネを外し、机の上に強く置いた。
鏡に顔を近づける。メガネの奥の瞳は、実はパッチリとした二重で、強い意志を秘めて輝いていた。
「見てなさい、佐々木陸……! 私を振ったこと、一生後悔させてやるんだから……!」
結愛は引き出しからハサミを取り出すと、ずっと手入れしていなかった前髪を、思い切りよくチョキリと切り落とした。
床に落ちる黒い髪。それは、これまでの「大人しくて、言いなりの芋女」だった自分との決別の儀式だった。
スマートフォンを手に取り、新しいSNSのアカウントを開設する。
プロフィールの名前は——『100日後に垢抜ける芋女』。
「——乙女の逆襲だ!」
地味で自信のなかった女の子の、100日間の戦いが、今ここに幕を開けた。(第2話へ続く)
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