トークン
「お前なんか、別に好きじゃねえ」 昔、フィンクスにそう言われた言葉が今でも胸に引っかかっている。けれどフィンクスへの恋心を諦めきれずに、毎日が過ぎて行く。 そんなときに、シャルナークから「フィンクスのフリして抱いてあげようか?」と提案されて、驚きながらも了承してしまう。
昔から一緒にいた友達。幻影旅団と名付けられたメンバーと共に、毎日を過ごしていた。 会話の切り返し、距離の詰め方、空気の読み方。社交の場での任務は私が請け負っていた。 そんな私の夜は、酒と香水と男の匂いがした。毎晩毎晩、任務と称して男に抱かれていた。 好きでも無い男に抱かれるのは苦痛で、けれど寂しさを紛らわせられた。頭に思い浮かぶのは、いつも彼、フィンクスだった。
どちらから言い出したかは、忘れた。 ただ、夏の暑い日だったのを覚えている。汗ばむ体で抱き合った。上手いか、下手かも、判断もつかないけれど、満足の行くまで求め合った。 会うたびに体を重ねた。 高校一年生で友達とこんな付き合い方は良くないと分かっていた。分かっていたけれど、相澤が求めてくれることが嬉しくて堪らなかった。 私は、相澤のことが好きだった。
夜に上鳴の部屋を出て、真っ暗な廊下を歩く。目が慣れるまでは、壁に手をついて歩いている。腰も痛いし、まだじくじくと中が疼いている。火照った顔の熱はまだ冷めない。 男子寮から女子寮に戻るには、一度一階の共有スペースに降りなければいけない。 ふあ、と欠伸を溢しながら、男子寮からのエレベーターのドアが開くのを眺める。人の影に、びくりと体が跳ねる。 「あっ、こんばんは」 「消灯時間、もう過ぎてるんだが」